サイト売買における税金のポイントや節税方法について、法人と個人に分けて解説します。
案件にもよりますが、サイトの売買代金は高額になるケースも珍しくありません。特に確定申告に不慣れな個人の方は、正しく納税するための基本的な知識を押さえておく必要があります。
何らかの商品・サービスを売却して所得を得た場合、その所得額に応じて一定の税金がかかります。サイト売却においても例外ではありません。
ただし、一般的な企業活動でかかる税金が法人と個人で異なることと同様、サイト売買にかかる税金も法人と個人で異なります。サイトを売却した際には、法人としての売却なのか個人としての売却なのかを明確に分け、適切な確定申告を行った上で納税しなければなりません。
法人がサイトを売却した際の税金について、3つほどポイントを確認してみましょう。
サイト売却で得た所得(売却金-諸経費)に対し、法人所得税がかかります。
法人所得税とは、法人の所得金額に応じて納付する税金のこと。法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税の4つの税金の総称を法人所得税と言います。
法人所得税の税率は一律で約30%。簡単なイメージで言えば、サイトの売却金が100万円で諸経費が20万円だった場合、所得金額の80万円に対し約30%の税率を乗じ、法人所得税額は約24万円と算出します。
業務用のサイトを売却した場合、収入金額に対して8%の消費税を納付する必要があります。売却手数料などに加算されていた消費税については、仕入額控除として消費税の納付税額から差し引く形となります。
ただし、消費税の課税事業者でない場合には、消費税の納付は必要ありません(※)。
※課税事業者…「サイト売却の前々年度の課税売上高が年換算額1000万円以下」など、一定の要件に該当する事業者
法人事業税や消費税は、サイト売却代金の全額にかかるものではなく、サイト売却に要した経費を控除した金額にかかるものとなります。
経費に含まれる項目は、たとえば売買サイトに支払った仲介手数料、契約書に貼付した収入印紙代、ドメイン移管等に要した手数料など。経費に算入すべき項目、算入してはならない項目について曖昧な場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。
個人がサイトを売却した際の税金について、3つほどポイントを確認してみましょう。
個人のサイト売却で得た利益は、原則として譲渡所得として処理します。サイト売買を継続的に行っていた場合は事業所得として処理する、との解釈もあるようですが、原則的に譲渡所得として処理すると理解しておきましょう。
ただし、サイトを転売する目的で買収費用を棚卸資産としている場合、またはサイト作成費を棚卸資産として計上している場合には、例外的に事業所得として処理することとなる点にご注意ください。
個人がサイトを売却する場合、その大半は譲渡所得として税金を算出しますが、サイト運営期間により税率が異なる点に注意が必要です。
ポイントは、売却の対象となるサイトを5年超にわたり運営しているかどうか。サイト運営期間が5年超の場合は「長期譲渡所得」とされ、税率は15%となります。一方、サイト運営期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」とされ、税率は30%になります。
なお、譲渡所得には特別控除制度があり、短期譲渡所得については50万円まで控除可能です。短期譲渡所得が30万円しかなかった場合には、長期譲渡所得のほうから残り20万円の控除ができます。
譲渡所得に課される主な税金は譲渡所得税(上述)ですが、譲渡所得税の納付義務が生じた場合には、住民税や復興所得税の納付義務も生じます。
住民税の税率は、長期譲渡所得の場合が5%、短期譲渡所得の場合が9%。復興所得税は一律2.1%です。ほかにも、個人事業主として事業用サイトを売却した場合には、課税事業者であれば消費税の納付義務も生じます。
また、サイト売却が事業所得と認められる場合には、別途で事業所得が課される可能性もあります。
サイト売却で得た所得に対して別の支出をぶつけ、損益を相殺する形で節税することが可能です。
たとえば、サイト売却で所得が生じた年度に設備投資を行えば、法人全体の所得を圧縮できるため節税につながります。
また、役員報酬は法人の損金に計上できるため、一時的にその報酬額を上げることで節税も可能となるでしょう。ただし、役員報酬を上げた場合、その役員本人の社会保険料等が上がることとなるため、バランスを考慮する必要があります。
サイトの立ち上げや運営に要した費用を正確に記帳し、売却時の経費として漏れなく算入しましょう。
また、サイト運営期間が5年超の場合は譲渡所得税率や住民税率が下がるため、タイミングを考慮した売却で税金を圧縮できます。
ほかにも、ふるさと納税を利用することで、多少ながら所得税を圧縮できる可能性があります。年度の自己負担2,000円のみで返礼品も楽しめるおすすめの節税法です。
小規模企業共済やiDeCo、国民年金基金など、所得から全額控除できる預け先へお金を預けることも有効でしょう。
多くの法人では税理士に相談しながら納税処理を行っていますが、個人や個人事業主の場合、必ずしも税理士に相談しているとは限りません。
個人や個人事業主も、年度の所得が48万円を超えた場合には確定申告が必要となります。サイト売却から得られる年度の所得が48万円を超える見通しとなり、かつ自分で正確に確定申告を行う自信がない場合には、速やかに税理士へ相談したほうが良いでしょう。