ドメイン譲渡契約書の定義、必要な記載条項、作成時のポイント・注意点について解説します。
信頼が蓄積したドメインは高値で取引されることがあります。ドメイン譲渡は事業譲渡の一種でもあり、時に大きなお金が動くこともあるため、契約書は漏れなく正確に作成することが大切です。
ドメイン譲渡契約書とは、ドメインの移管に関する詳細な約束事を記載した譲渡契約書の一種です。
インターネットのビジネス利用が一般的となった現代、特定のサイトやSNSなどの売買に加え、ドメインの売買も盛んに行わるようになりました。ドメイン売買において、売却側と買取側でトラブルにならないよう作成する書類が、ドメイン譲渡契約書です。
ドメイン譲渡の手続きは、時に専門家のサポートが必要となることもあるほど、決して簡単ではありません。慣れない者同士がドメイン移管の手続きを行った場合、サイトの消失や表示順位の混乱等につながるリスクもあることから、リスク負担や責任の所在を明らかにする意味も込め、ドメイン譲渡契約書が交わされます。
ドメイン譲渡契約書の直接的な目的はドメインの適切な移管ですが、最終的な目的は、売却側においてはドメイン譲渡で利益を獲得すること、買取側においては信頼あるドメインを譲り受けて利益につなげること、にあります。
ドメインは、世界に1つとして同じものが存在しません。そのため、信頼が蓄積したドメインは、信頼が蓄積した企業と同様、M&Aによる売買の対象となりえます。売却側と買取側の双方が自らのビジネス目的を達成させるため、ドメイン譲渡契約書が交わされます。
ドメイン譲渡契約書の冒頭には、主に「目的」「定義」「対象ドメイン」の3つを明記します。
「目的」では、当事者間でドメイン譲渡を目的とする旨の契約書であること、「定義」では、契約書内で使われる概念の明確な定義、「対象ドメイン」では、売買の対象となるドメインも文字列を記載します。
ドメインの譲渡価格を明記します。あらかじめ売却側と買取側で合意していた譲渡価格を、そのまま記載する形です。
譲渡価格とあわせて、支払い期限や支払い方法なども記載します。また、ドメインの移管が段階的に行われる場合には、段階ごとに分割で支払う取り決めとしても良いでしょう。
ドメインの移管手続きには、一般に費用がかかります。また移管後、ドメインを維持するための費用がかかることもあります。
ドメイン譲渡契約書では、これでの費用負担について明記しなければなりません。ドメインの移管手続き中に支払いが滞った場合、管理会社にドメインを削除される恐れがあるので、手続きの期日も明記した上で、速やかに移管手続きを行いましょう。
ドメインの譲渡方法と譲渡日を明記します。
譲渡方法はドメイン管理会社によって異なり、中には手続きが煩雑な場合もあることから、事前に移管手続きのプロセスを確認の上、ドメイン譲渡契約書にも移管手続きの要領を記載しておくことが望ましいでしょう。
ドメイン譲渡契約書には、善管注意義務や秘密保持義務に関する記載も忘れないようにしましょう。
善管注意義務とは、売買の当事者の職業や地位にふさわしい程度の注意を払う義務のこと。秘密保持義務とは、取引において知りえた相手の秘密情報を漏洩しない義務のこと。商取引のあらゆる契約で前提とされる義務です。
ドメイン譲渡契約書を作成する際に注意したい3つのポイントを確認します。
売却側と買取側のドメイン管理事業者が異なる場合、ドメインの譲渡そのものが技術的に不可能なことも考えられます。双方の合意によりドメイン譲渡契約書を作成したにも関わらず、いざ契約を実行しようとした際、技術的にドメイン移管ができなければ、これまでの双方の努力が水の泡です。
まずはドメインの移管ができるかどうかを確認の上、ドメイン譲渡契約書の作成に着手しましょう。
ドメインの譲渡を行うためには、売却側がドメインの所有者情報の変更手続きを行わなければなりません。売却側が必要な手続きを行わない限り、買取側は「代金を支払ったにも関わらずドメインを使えない」という状況にもなりかねない点にご注意ください。
買取側においては、売却側が確実にドメイン所有者変更手続きを行うよう、ドメイン譲渡契約書に具体的な段取りや期日などの記載を求めるようにしましょう。
ドメインを移管する際には、ドメイン管理会社に対して移管費用を支払うことが一般的です。また、ドメインの移管後、ドメインの権利を維持するためには、継続的に費用を支払わなければならないケースもあります。
一般的には、ドメイン譲渡前に発生したコストを売却側が負担し、ドメイン譲渡後に発生するコストを買取側が負担しますが、商慣習に任せて線引きを不明瞭にすることはトラブルのもと。ドメイン譲渡契約書では、費用負担について明確に記載しておきましょう。