サイト売買で譲渡契約書を作成する際に必要な記載事項、契約書を作成する際のポイント・注意点について解説します。
サイト売買は、M&Aで言う事業譲渡の一種。譲渡契約書を正しく作成し、双方にトラブルの起こらない気持ちよい取引をしましょう。
サイト譲渡契約とは、Webサイトの譲渡を取り決める契約です。具体的には、Webサイト自体のほかにも、当該Webサイトによる事業、および付随する権利義務も含めた総合的な譲渡をサイト譲渡契約と言います。
サイト譲渡契約は、M&Aの視点から見れば事業譲渡契約の一種と解釈できるため、会社法上の必要的記載事項が定められているわけではありません。ただし、全くの口約束で契約した場合、何らかのトラブルに発展するリスクもあるため、売却側・買取側の双方の合意内容を明らかにしておくことが大切です。そのための書類が、後述するサイト譲渡契約書になります。
サイトの現在価値や将来性によっては、サイト譲渡契約は大きな契約になる可能性もあります。安易な方法で契約を結ぶべきではありません。
サイト譲渡契約書に記載すべき条項のうち、以下では特に重要な条項を6つほど確認します。
契約書の初めに、譲渡対象となるサイトのタイトル、およびURLと譲渡実行日を記載します。次に、具体的な譲渡対象の「資産」や「契約上の地位」など、譲渡の対象範囲を明確に列挙します。
ここに言う「資産」とは、ドメイン使用に関連する権利、プログラム等の情報、知的財産権など。「契約上の地位」とは、サーバーやドメインに関連する契約、ユーザーとの契約、広告主との契約などを言います。
対象となるサイトの譲渡価格を明示します。
譲渡価格が大きな金額となる場合、買取側に対し売却側が一部手付金の支払いを求めるケースも珍しくありません。事前に双方で十分に話し合い、納得できる支払い方法を決めましょう。
なお、適切に支払いが行われなかった場合に備え、売却側から買取側に対し、支払いに関する遅延損害金の条項を記載する場合もあります。
サイトの引渡し方法、引渡し前の検査、引渡しに関連して生じうる危険の負担などについて明記します。
引渡し完了前におけるサイトの損害については、一般的に売却側が責任を負う形となりますが、損害の原因が買取側にある場合には、その責任を買取側が負うことも明記しておきましょう。
売買されたサイトが正常に運用されるまでの間に、突発的な費用が発生するケースもあります。この場合の費用の負担者も、契約書に明記しておきましょう。
一般的には、サイトの譲渡日より前に発生した費用は売却側、サイトの譲渡日より後に発生した費用は買取側が負担する形となります。
売却側が作成したサイトには売却側の著作権が付帯しているため、譲渡契約書において、著作権が買取側へ移転した旨を記載する必要があります。
著作権の移転については双方の合意のみで成立しますが、第三者へ対抗するためには文化庁で著作権の移転登録をしなければなりません。
なお、所定の手続きにより著作権の譲渡が成立しても、著作者人格権を譲渡することはできないため、契約書には「著作者人格権を行使しない」という旨を記載する例もあります。
「サイトの売却後の一定期間、売却側は類似したサイトを立ち上げない」という、いわゆる競業避止義務の規定を明記することも一般的です。
買取側の機会損失を予防するために競業避止義務を設定しますが、売却側においては新サイトの立ち上げに影響のないよう、競業避止義務の範囲を広げすぎないよう注意しましょう。
サイト譲渡契約書を作成時、注意したい3つのポイントを確認します。
譲渡後、目的通りにサイトを運営するための必要事項が全て譲渡対象の範囲に含まれているかどうか、売却側・買取側の双方で確認します。資産・契約上の地位の具体的内容をよく精査し、譲渡範囲の記載漏れがないよう注意しましょう。
買取側においては、基本的に譲渡範囲が広ければ広いほど良いことになりますが、くれぐれも債務の継承にはご注意ください。
サイトの譲渡を実行する前に、売却側は、サイトの正常運用を保証するための検査を実施します。売却側が行うべき最低限のルールの1つですが、買取側も県債に関しては厳しく求めましょう。
サイト譲渡契約書においては、検査を実施する期限、および期限内の未実施に対する売却側の対応について明記します。規定通りに検査を実施したにも関わらず生じた損失については、危険負担のルールを明確に定めましょう。
知的財産権の移転に関する記載を詳細にチェックしましょう。
一般に知的財産権と聞くと、特許権や実用新案権、意匠権、商標権などをイメージするため、売却側も買取側も「このサイトにはそんな大げさな権利はない」と考えがちですが、サイトを自作した以上、売却側には著作権という知的財産権が自動的に発生しています。契約書を作成する際には、著作権の移転に関する記載を忘れずに行いましょう。